🧭 AI駆動開発で見直す、ドメイン駆動の開発プロセス
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🧭 AI駆動開発で見直す、ドメイン駆動の開発プロセス

AI 駆動開発では、実装する速度だけを速くしても開発全体は速くなりません。

実装・調査・転記が短くなるほど、誰が何を決め、どの条件で利用者に出すのかという判断が、かえって目立つ制約になります。そこで必要になるのが、コードの設計だけでなく、開発プロセスそのものを事業の文脈から設計することです。

この記事では、これを「ドメイン駆動開発プロセス」と呼びます。目的は、AI に委ねる作業と、人間が引き受ける判断を切り分けることです。

実装の高速化で、ボトルネックは消えない

AI は実装の試作、既存コードの探索、テストの下書き、記録の整形を速くします。一方で、次の問いには自動的な正解がありません。

  • この変更は、いま顧客へ出すべきか
  • 失敗時の影響を受け入れられるか
  • どの例外を誰が判断するか
  • どの情報を残せば、次の担当者が再開できるか

これらは組織の責任分担と利用者への影響で決まります。AI が実装できることと、組織が採用すべきプロセスは別の問題です。

マナリンクの実践記事は、AI 時代の開発プロセスを「誰が、いつ、何を決め、何に責任を持ち、いつ本番リリースできるようになるか」と捉え直しています。ここで重要なのは、既存の会議をそのまま自動化することではありません。自社で暗黙に機能していた判断の流れを、先に言語化することです。

タスクの列ではなく、状態遷移を設計する

チケットを To DoIn ProgressDone に並べるだけでは、判断がどこで必要なのか見えません。AI エージェントが並行して動くなら、なおさら現在地を機械的に復元できる状態が必要です。

まず、施策の流れを状態と遷移条件に分けます。

課題仮説 実現方針 実装と検証 リリース判断 学習と更新

各状態に「責任者」「入力」「完了条件」「記録先」「差し戻し先」を置きます。例えば実装完了からリリース判断へ進む条件は、テストが通ることだけではありません。利用者への影響、監視の準備、ロールバック方法、承認者を確認して初めて遷移できます。

この形にすると、AI ができることは明確です。状態の間にある、情報収集、差分確認、テスト、記録更新、通知は自動化できます。一方で状態を進める判断は、責任を持つ人が行います。

ドメインに合わせて判断点を置く

DDD の Bounded Context は、モデルを一貫して使える境界を明示する考え方です。開発プロセスにも、同じ発想が役立ちます。

どの変更を試験公開できるか、どこで二者承認が必要か、どの失敗を即時ロールバックするかは、技術スタックだけでは決まりません。顧客への影響、規制、回復可能性、組織の意思決定構造で変わります。

たとえば、可逆で観測しやすい画面改善なら、仮説から計測までを短くしてよいでしょう。反対に、利用者の学習や業務を途中で混乱させる機能なら、安易な比較実験より、事前の判断と復旧条件を厚くする方が合理的です。

AI が使えるから新しい手法を採用するのではなく、自社のドメインに合うから採用する。この順番を守ると、速度と統制を対立させずに済みます。

自動化の境界を決める四つの質問

ある遷移を自動化する前に、次の四つを確認します。

  1. ここで新しい価値判断をしているか
  2. 失敗した場合、誰が説明責任を負うか
  3. 判断を再現するために何を記録するか
  4. 答えが一意に定まるか

最初の三つに人の判断が残るなら、AI は意思決定者ではなく、判断材料と記録を整える実行者として配置します。四つ目が明確なら、Skill やワークフローにして自動化できます。

区間 人間が担うこと AI が担うこと
課題仮説 優先度と非対象の決定 類似事例・既存仕様の収集
実現方針 制約と採否理由の決定 影響範囲の探索、案の比較
実装と検証 受入条件の解釈 実装、テスト、差分説明
リリース判断 リスク受容と責任 監視確認、通知、記録更新

最初は一施策だけを図にする

プロセスを全社で作り直す必要はありません。直近で終えた一施策について、実際に通った状態を時系列で書き出します。

途中で「この人に聞かないと進まなかった」場面は、重要な判断ノードです。その間にあった調査、転記、テスト、通知は自動化候補になります。この区別ができると、AI 導入で失われやすい責任の所在を残したまま、待ち時間を減らせます。

成果は、生成コード量で測らない方がよいでしょう。判断待ち時間、差し戻し回数、リリース後の修正頻度を追うと、プロセス設計が本当に効いているかを確認できます。

まとめ

AI 駆動開発で再設計すべきなのは、実装手順だけではありません。事業ドメインに合わせて判断の状態遷移を定義し、その間を AI が安全に運べる形にすることが重要です。

まずは一施策の判断点を可視化し、人が決める場所と自動化できる場所を分けてみてください。そこから始めると、速度を上げながら責任の境界も明確にできます。

参考リンク