概要
AI 委任の readiness を機械採点する OSS ai-delegation-readiness に、組織 readiness 軸を追加しました(v0.3.0)。
これまでこのツールは「業務プロセスが委任に耐えるか」を 4 層(標準化 → 構造化 → 委任範囲 → 統制)+ 効果測定で採点していました。しかし AI 導入提案の現場で本当の障害は、業務プロセスより組織側にあります。撤退判断の権限が無い、受け皿となるリテラシー層が育っていない、知識移転契約を書けない、bus factor が 1 のまま。これらは業務プロセスをどれだけ磨いても解けません。
そこで、姉妹記事「AI 前提時代の少人数フルスタック組織」で整理した味の素モデルの 6 条件チェックリスト + 反証 5 を、ツールの並列軸として実装しました。「業務は委任できるが、組織がまだ受け止められない」を、緑の業務スコアに隠さず独立した穴として表面化させます。
特徴: 2 軸を「並列」に採点する
キモは、組織軸を 4 層に積み上げないことです。4 層は下層が崩れると上層の点検に意味がない「ゲート層」ですが、組織 readiness は業務プロセスとは別の観点なので、efficacy(効果測定)と同じ並列軸として置きます。
同梱サンプル ajinomoto-discovery-team.yaml(業務は整っているが組織が未成熟なチーム)を採点するとこうなります。
[OK] L1 業務標準化層: PASS (100%)
[OK] L2 判断構造化層: PASS (100%)
[OK] L3 委任範囲層: PASS (100%)
[OK] L4 統制・追跡層: PASS (100%)
[OK] efficacy 効果測定: PASS (100%)
[NG] organization 組織 readiness層: BLOCK (33%)
no: organization.C2, organization.C4, organization.C5, organization.C6
Conclusion: BLOCK
業務層は全て PASS でも総合判定は BLOCK。組織軸が、受け皿(C2)・知識移転契約(C4)・漸進分割の設計(C5)・bus factor 対策(C6)の不足を指し示します。これが「ベンダー比較から入る顧客に、組織側の障害を材料として返せる」という価値です。
■構造: role で層と並列軸を振り分ける
実装は既存の採点パイプラインに role という 1 フィールドを足すだけで済みました。check-readiness は定義の全 group を読み、header の role でゲート層と並列軸に分けます。
設計上こだわった点が 3 つあります。
- 未知の role はエラーにする:
paralellのような typo が入ると、組織軸が静かにゲート層へ降格し、変更の目的そのものが無言で反転します。これを防ぐため、許可値以外の role はValueErrorで落とします。 - 空の並列軸はスキップする: leaf を持たない並列軸(overlay 前提の空軸)は score 0.0 → block になりがちですが、「未評価」として採点から外し、誤 BLOCK を防ぎます。
- JSON 出力を軸の集合に一般化:
efficacy(単数)をparallel_axes(配列)に変えました。将来 CI や AI エージェントが軸を横断的に読めます。
■データ: 定義の概念モデル
組織軸は正本の定義ファイルに直接足しました。overlay で自社固有の条件を追加・強化することもできます。
- Group.role が振り分けの唯一のキー。
organizationはrole: parallel。 - 合否基準は pass 1.0(6/6)/ revise 0.66(4/6 以上)。元記事の「4 つ以上なら試行は妥当、3 つ以下ならまず受け皿作り」に一致します。
- 反証 5 は軸の
case_evidenceに根拠として記録。ただし元記事が数値の再確認を留保した反証(技能 17% 低下・ジュニア 20% 減)はclaim_needs_verificationとし、事実断定していません。
使う
docker run --rm ghcr.io/suwa-sh/ai-delegation-readiness:v0.3.0 \
check-readiness examples/business/ajinomoto-discovery-team.yaml
自社を採点したいときは、examples/business/ のサンプルをひな型に yes / no を埋め、必要なら overlay で自社固有の組織条件を足してください。詳細は docs/03_organization_axis.md にまとめています。
まとめ
- 業務プロセスの readiness(4 層)と、組織の readiness(6 条件)は別物です
- 並列軸として採点すると、「業務は委任可だが組織が未成熟」を分離して見せられます
- 実装は
roleフィールド 1 つの追加で、既存の overlay 拡張(add / strengthen)もそのまま効きます